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『シロツメクサ』
爽やかな風が吹いている新緑の五月
真選組頓所。
「…おい、何だこれは…」
見回りから戻った土方は、おおよそ頓所に似つかわしくないその物体と沖田とを
交互に見遣り言った。
「何だって、坂本の旦那でさぁ。俺より土方さんの方が、よく知ってるじゃない
です」
「煩せぇ。…って、ちょっと待て総悟。今、なんつった」
「難聴ですかィ?嫌ですねぇ、歳は取りたくねぇもんだ」
「いいから、今なんつったんだ」
「だから、坂本の旦那でさぁ」
おおよそ頓所に似つかわしくないその物体、…四、五歳くらいの小さな子供を指差し
沖田は言った。
「あのなぁ、総梧…」
「信じられないって気も分かりやすがね。確かにこの子供が坂本の旦那
なんでさぁ。…こいつの所為で」
沖田が、バズーカを肩に担いだ。
「そいつぁ、お前がよく使ってるバズーカじゃねぇか。…主に俺狙撃用で」
「土方さん狙撃用って事では、同じですがね。こいつは、いつものバズーカ
じゃないんでさぁ。…その名も『20年バズーカ』ですからねィ」
「なんだ、そのぱちもんはァァァァァ!!!」
「コンビニで売ってたんでィ」
「買うな!そんな怪しいもん!」
「土方さんを亡き者にする為には、努力は惜しみませんぜ」
「その努力を仕事に向けやがれ…。で、俺用に買ったバズーカで何で
こんな事になってんだ?」
「『十四郎、おるかの~』って、へらへら笑いながら坂本の旦那が
タイミングよく現れたんで」
「坂本で、試したんだな…」
「そういう訳で、正確には20年前の坂本の旦那ってわけでさぁ」
「…20年よりもっと前な感じがするがな…」
はあぁ…と、ため息を付いた土方は、どこか怯えた目でこちらを見ている
子供へと視線を移した。
頭はもじゃっとしているし、こちらを見ている一重の瞳は確かに面影がある。
意を決して土方は、子供に声を掛けた。
「お前、名は?」
「……っさかもと…たつま…」
はああ、とより深いため息を付いて、土方は子供、いや坂本を見ると
何故か坂本は、目に涙をいっぱい溜めていた。
「……。…なあ、おい総梧。…なんか泣きそうなんだけど」
「土方さんが、恐い顔してるからじゃねぇですかィ」
「これが地顔だっ!!!」
「ふっ…びええええええええええええええ」
「あぁ~、土方が泣かしたぁ~」
「俺の所為なのかっ!!?」
「いけませんぜ、土方さん。小さい子には、笑顔で接しないと」
「お前に言われたかねぇ」
「まっ、ぜいぜい元に戻るまで仲良くやって下せィ。その内元に戻ると思うんで」
言うと、沖田は腰を浮かせて部屋から出て行こうとした。
「なっ!ちょっとまて総梧!何処行く気だ!!」
「面白そうなんで、見てたいんですがねぇ。これから見回りの時間なんでさぁ」
「いつもサボってんじゃねぇか!!…テメー逃げる気だな」
「とんでもない。どっかの誰かさんが仕事にやる気だせってんでね。
あっ。そうそう土方さん今日誕生日でしたねィ。それ、俺からのプレゼント
でさぁ。それじゃ」
「おいっ、待てっ!!!」
ぴしゃりと、障子が閉まり本当に沖田は出て行ってしまった。
部屋には、今だ泣いている坂本と土方のみ。
…しかし、よく泣くな。
土方は少し意外な心持ちで、泣いている坂本を見た。
へらへらとよく笑っている今の坂本からは、想像出来ない。
何時も何時も、笑っている。
それに絆されたのか、今では坂本が自分にとって一番近しい存在になってしまった。
そんな、何時も笑っている奴だったから、子供の頃もそんなだったのだろうと、
ぼんやりと思っていた。
泣いている坂本に、目線を合わせる様にしゃがむと土方は、坂本の頭を
くしゃりと撫でた。
「泣くな」
下を向いて泣いていた坂本が、土方を見た。
涙と鼻水で、ぐちゃぐちゃの顔に、思わずふっと顔を緩めると
「俺ぁ、土方十四郎ってんだ。何もお前を取って食おうってんじゃ
ないから心配すんな」
そう土方が言うと、目を驚いた様に見開いてその後、にこーっと笑った。
ああ、なんだ笑い顔は子供の頃から全く変わってねぇんだ。と、土方は
一つ苦笑をもらした。
そよそよと、風が吹いている。
公園のベンチに腰掛け、小さい坂本は土方の隣で足をパタパタとゆらして
アイスを食べていた。
「美味いか?」
「うん、うまいっ!としは、たべないが?」
「俺ぁ、甘いもんは苦手だ」
「そうながか~。おっ、ふねじゃっ!!」
見上げると、ターミナルから飛び立った宇宙船が
青い空を泳いでいた。
ひょいっとベンチから飛び降りた坂本は、上を見上げながら
パタパタと走り出した。
「おい、転ぶぞ」
言った途端、べちゃっと豪快に転んだ。
あぁ、言わんこっちゃないと、土方はベンチから立ち上がると坂本の元へ。
もそっと、自力で立ち上がった坂本は目に涙を溜めながら、ぐっと泣くのを
堪えていた。
「おっ、泣いてねぇ」
「…さっきとしが、なっ、なくなゆうたからっ…なかん」
「…そうか。強いな、お前」
土方が坂本の目元を自分の袖口で拭ってやると、くるくると癖のある
髪を風に靡かせて照れた様な笑顔が零れた。
「あ。土方さん」
「…ん?よう山崎。何だ、サボりか」
「違いますよ。俺は、今日の誕生日会の買い出し係りですから」
手にしていた買い物袋を、持ち上げて山崎は笑った。もう一つの手には、丸いケーキ
が入っているであろう四角い箱を持っている。それを目にとめて、土方は思わず
苦笑を一つ。
「この歳になって、誕生会もねぇだろうに。まったく…」
「まあまあ、皆騒ぐの大好きですから。…あっ、その子坂本さんですか?」
土方の足へとへばり付いて、身を隠すようにしていた坂本が
そろそろと頭を出して、山崎をじっと見つめた。
「こんにちは」
「…こ、こんにちは」
「沖田さんが、面白い事になってるって言ってたけど。なんだ、懐いてるじゃ
ないですか」
「煩せぇ」
「あはは。さてと、じゃ俺は屯所に戻りますね。土方さんも、夕暮れくらいまでには
戻ってきて下さいよ。誕生日会の主役が居ないと、大変ですから」
「へいへい…」
山崎の後ろ姿を見送っていた土方の裾が、くいっと引っ張られた。
ん?と下を向くときらきらとした目の坂本と目が会う。
「きょうは、としのたんじょうびながか?」
「ん?あぁ、まあな」
ぱああっと、顔を明るくしたかと思うと坂本は土方の手を取り
ぐいぐいと公園を進む。
おい、如何したと土方が言っても、こっちと言うばかり。
景色が、一変した。
其処は、真白いシロツメクサが一面に咲き乱れていた。
「ちっくと、まってて」
訳が分からんという表情で、腰を下ろして待っていると
両手いっぱいに、シロツメクサを抱えた坂本が戻ってきた。
「これ」
「ん?何だ」
「ぷれぜんとじゃ!としに」
両手いっぱいの、シロツメクサを渡して
はにかむ様に笑う坂本につられて
土方も酷く優しい笑顔になった。
その笑顔に、坂本が口を開こうとした瞬間。
ぼふんっという、音と供に白煙が立ち込めた。
「なっ…げほっごほっ…」
むせ返る程の白煙が、さっと消えると其処には
赤いコートを着込んだ長身の男が立っていた。
「辰馬、お前…」
「…んん?十四郎……って事はわしは、元の時代に戻ったんじゃな」
いつもの、見慣れた赤いコート姿にほっと胸を撫で下ろして、
けれどそれを気ほども表情には、出さず土方は坂本へと詫びた。
「悪かったな。うちの総梧の野郎が、迷惑を掛けた」
「なに。…沖田くんのお陰じゃからのぅ」
「何がだ?」
「んん?ん~、わしの初恋」
「はあ?」
「ああ、そうじゃ」
足元のシロツメクサを一つ、取ると坂本は土方へと差し出した。
「おめでとう、十四郎」
「……あんがとよ」
ふいっと横を向いてしまった土方の耳が、赤くなっていた。
ふつふつと愛しさが込み上げてきて、そのまま坂本は土方を、ぎゅっと抱きしめた。
としと、会った時のように急に景色が、見慣れたものになり目の前からとしが消えた。
泣かないと言ったのに、哀しくて哀しくて涙がぽろぽろと零れた。
切なさは、いつしか時間の流れとともに、ゆっくりと消えていった。
けれど。
心の奥には、いつまでもとしの笑顔が消えなかった。
テレビに映った土方を観た瞬間、坂本は駆け出していた。
まあ、大人になって会ったとしは、笑顔なぞ全然見せてくれなかった訳だが。
押して押して押し捲って、漸く手に入れた大切なもの。
そして、今。
あの時、言えなかった言葉を。
「…漸く言えたの」
「何か言ったか?」
「いや、何にも」
そう言うと、坂本は子供の頃と変わらぬ笑顔で笑う。
染み込む様なその笑顔に、つられて土方からも笑顔が零れる。
さわと、吹いた五月の風に辺り一面の白い花が、のんびりと揺れていた。
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お誕生日おめでとう、土方さん!!
…しかし、これ1○年バズカ知らない人には、なんのこっちゃな小話ですよね…。
すみませっ、(脱兎
あ、でも愛は込めたよ土方さん!
では!(スタコラ
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その時々に、萌えてるものを
吐き出してます。
マイナー嗜好。
チキン。
坂土が広がればいいと全力で思います。
関東圏の人間なので、坂本さんの言葉がいろいろおかしな事になってるかと思いますがスルーして頂けると助かります。
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