『柔らかな夜』

坂土小話。

『柔らかな夜』

青い、青い月が柔らかに街を照らしているそんな夜。


「……っ……ふっ…」

与えられる柔らかな快楽に、思わず声が洩れそうになり土方は
思わず自分の指を噛み締めた。

「……こら。そがいに、つよ－噛んだら血ぃば出るよ？」

そう囁きながら、噛み締めている指に啄むようなキスを落とすと、
漸く指がゆっくりと唇から離れてゆく。

その唇に、深い深いキスを落とす。
存分に土方の口内を、味わってから坂本は土方の目を見て言った。

「…声ば聴かせて？」
「……っ…」

耳まで真っ赤になりながら、 下を向いていやいやをするように頭を降る
土方に坂本は耳元でそっと囁いた。

「わししか聞とりゃーせんよ…？」
「……っふ……つ、月が…んっ…」

見ている

与えられる快楽に、声を詰まらせながら土方はそう言った。
振り返ると、少し開いた窓から青い月が見てとれた。

ふっと、笑みを零すと坂本はそっと窓を閉めた。

わしだけで、いいんじゃ。

普段ストイックな彼が、こうも甘く乱れる姿は自分だけが知ってればいい。
真撰組の仲間や、金時も知らない顔。
わしだけの…